喰い切りとは?バリ発生のメカニズム

ゴム成形において避けられない問題のひとつが「バリ」の発生です。バリとは、金型の合わせ面にわずかな隙間があることで、加硫成形時にゴムがその隙間からはみ出してできる不要な突起部分を指します。
そこで重要となるのが「喰い切り」と呼ばれる金型構造です。喰い切りは、金型の合わせ面に特殊な形状を設けることで、発生したバリをきれいに除去することが可能になります。喰い切りは、製品の品質向上や後工程での仕上げ作業の軽減に直結する、非常に重要な技術です。

喰い切りの種類と特徴

V字喰い切り

V字喰い切りは、金型の合わせ面にV字状の溝を設けることで、成形時にはみ出したゴムを確実に切断する方式です。ゴムが型合わせ部の隙間に流れ込むと、V字の鋭角なエッジでせき止められ、シャープにバリが切り落とされます。
設計においては、溝の角度・ランド幅・使用材質への適合性が重要な要素となります。角度が広すぎると切れ味が鈍り、逆に狭すぎると金型が摩耗しやすくなるため、製品形状やゴム特性に応じた最適化が求められます。

ブロック喰い切り

ブロック喰い切りは、V字のように溝を設けず、ブロック構造を利用して成形品を押さえ込む方式です。理論上は溝が存在しないため、バリ幅をゼロに近づけられるのが最大の特長です。
メリットとしては、製品エッジ部がシャープに仕上がり、二次仕上げ工程の削減につながる点が挙げられます。一方で、繰り返し使用による耐久性の低下や、適用できる製品形状に制約がある点がデメリットとなります。そのため、対象製品の形状や求められる精度に応じた採用判断が必要です。

動画による解説

ゴム金型の喰い切りに関してはこちらの動画で解説していますので、良ければ参考にして下さい。

喰い切り設計の重要ポイント

ゴム金型における喰い切り設計では、製品品質や生産効率に直結するため、いくつかの重要な要素を考慮する必要があります。

抜き勾配(3°~5°)の必要性

製品をスムーズに型から離型させるためには、適切な抜き勾配の確保が不可欠です。一般的には3°~5°程度の勾配が推奨され、これにより離型時の摩耗や破損を防ぎます。勾配が不足すると、喰い切り部に過度の負荷がかかり、型寿命や成形安定性に悪影響を及ぼします。

ゴム材質・硬度別の設計調整

ゴムの材質や硬度によってバリの出方や喰い切り部の負荷は大きく異なります。柔らかい材質ではゴムが逃げやすいため、溝の深さや角度を見直す必要があります。一方、硬度が高い場合は摩耗リスクを考慮し、ランド幅や角度の最適化が求められます。

金型メンテナンス・改造性への影響

喰い切り溝の形状は、後のメンテナンスや改造作業にも影響します。特にV字喰い切りでは、修正時に溝が障害となり、再加工が難しくなる場合があります。そのため、設計段階で長期的なメンテナンス性を考慮しておくことが重要です。

喰い切り事例

上:V字喰い切り機構を追加
下:通常の機構

金型

成形品